AXIES企画セッション(2016/12/16)

https://axies-csd-cr.blogspot.jp/2016/12/axies.html

AXIES3日目,著作権の企画セッションはなかなか実のある内容であった。主な内容はリンクの通りであったが,個人的に関心のある論点を記す。著作権についてのわたしの意見は,大学関係者と違うことが多いが,今回は同じような意見も少なくなかった。

(1) 日本でも実質的にフェアユース相当の場合が多い

山中先生(千葉大)が指摘していたように,「引用」で通るぐらいの量であれば,著作権の問題はおこりづらい。また,10月のフォーラムでも報告でも,多くが無償で利用許諾をしてくれること,また,権利者団体が問題視する例はフェアユースを法律が取り入れても真っ黒である。

フェアユース規定ができたところで,教育機関が好き放題に著作物を使えるわけではない。このあたりに異論があるのは承知しているが,「真っ白」ではなく,白に近いグレーをめざしてリスクをコントロールするのが実践的であろう。白くても訴えられるときは訴えられる。

(2) フェアユースにガイドラインは向かない。

竹村先生(阪大)がガイドラインで線を引いてしまわずにグレーな方がいいと発言なさっていたが同感である。米国のフェアユースガイドライン等でも量的な指標は示していない場合が多いのではないか。たとえば,「何ページ」とかではなく,”small amount”のように書いてあったりする。

もともと,フェアユースの概念は法律になじまない。しかし,その法理は必要だとされている。ゆえに,なにがフェアかについてはあいまいな範囲しか示せず,個人や機関がそれぞれリスク判断をするしかないものと思う。こういうのみんな嫌うけどね。

(3) 補償金について

補償金に関しても10月にあったAXIESのフォーラム以降,楽観的に考えるようになった。ひとつは以前のソフトウェアライセンス契約の状態が,著作権の現状と似ていると思うからである。10年ぐらい前にソフトウェアの違法コピーが問題視されていた。しかし,現在はソフトウェアは包括契約が当たり前になり,違法コピー問題はなくなっていないにしても,権利者と対立するような大きな懸案事項ではなくなった。

同様に広く薄い補償金が実現すれば,著作権問題は大きな問題になりづらいと思うようになった。広く薄い補償金+個別のライセンス料は,比較的きれいな制度設計である。しかし,権利者がまとまるかどうか,誰が補償金を負担するかは総論賛成各論反対でもめそうな気はする。このあたりは,フォーラム後に重田先生,渡辺先生と議論しながら,一定の理解を得て,アイデアを進めることができたので,そのうちまとめてみたい。

以上,「白でなければならない」と思う人からはゆるしがたい意見であろう。しかし,Welqのように法令に触れないがフェアではないのは問題である。著作者の権利を尊重しながら,利便性をはかるような方法を考えていくのも,公的な役割を持った機関のしごとであろう。

参考: キュレーションメディアは著作権侵害の責任を負わなくてよいのか(栗原潔) - 個人 - Yahoo!ニュース